6月22日 「DHAの日」 日本のおさかな記念日

健康に役立つ魚の油 ~6月22日は「DHAの日」~

マルハニチロ株式会社 中央研究所 企画課 小西 達也

  1. 6月22日はなぜ「DHAの日」?

DHA(Docosahexaenoic Acid=ドコサヘキサエン酸)とは、一言で言えば「私たちの体に必須の脂肪酸(栄養素)」であり、人間の脳や目の網膜、それから心臓(心筋)、胎盤や精子、母乳に多く含まれています。年齢を問わず、とても大事な成分ですが体内ではほとんど作ることができず、食事を通じて摂る必要があります。DHAは、イワシやサバなどのいわゆる青魚の他、マグロ、サケ、ブリやカンパチなどにも豊富に含まれています。このDHAですが、下の図のように6個のシス型の二重結合を含む22個の炭素鎖をもつカルボン酸の総称であることから、DHAの認知度の向上を目的として、6月22日を「DHAの日」として登録されました(2012年6月、一般社団法人日本記念日協会)。

  1. DHAの機能性

DHAは様々な効果が報告されていますが、DHAの研究は、1971年にDyerberg1)らの疫学調査によって、グリーンランドに住むイヌイットは、動脈硬化や脳梗塞などの生活習慣病、また心筋梗塞などによる死亡率が少ないことがわかり、イヌイットの食生活に注目が集まったところから始まりました。さらに、1989年にイギリスのMichael Crawford教授(脳栄養科学研究所)が発表した「日本の子供の知能指数が高いのは、日本人が昔から魚をたくさん食べていたことが理由の一つ」という説をきっかけにDHAへの注目度が一挙に高まりました。

・血中中性脂肪の低減効果

DHAが中性脂肪を減らすメカニズムとしては、肝臓において脂質の脂肪産生を抑制すること、脂肪酸の分解(燃焼)が増加することが考えられます。「DHA含有 魚肉ソーセージ」(DHA 850 mg, EPA 200 mg)を1日1本、4週間摂取したところ、高脂血症範囲からほぼ正常範囲まで中性脂肪が低下しました2, 3)

・認知機能の改善効果

DHAは神経細胞膜の主要な構成成分であり、DHAを摂取することで、膜の流動性を高めたり、神経細胞の新生を促進させたりする作用があります4)。また、DHAの継続的な摂取は赤血球膜の脂肪酸組成を変化させ、加齢に伴う短期記憶力の低下や認知機能の低下を抑制し、認知症予防の可能性が示唆されました5)

他にも、「アトピーやアレルギーへの抑制効果」や「睡眠に対する効果」などさまざまな効果が知られています。

また、DHAはヒトだけでなくネコにとっても「腎機能の保護効果」が報告6)されていますので、愛猫の健康のためにも食餌を気にしてみてはいかがでしょうか。

  1. DHAはどのように摂ればよい?

DHAを逃さないポイントは3つあります。焼く、煮などの調理中に油が流れ出てしまうこともあるため、①脂ののった旬の魚を生で食べる。②加熱する場合は、流れ出た油も一緒に食べる。③缶詰などを利用する場合は、缶の汁も一緒に食べる。摂取量の目安としては一日に1g~1.5gで、DHAは母乳にも含まれるため妊娠中の方にも、水銀量の少ないイワシ、サンマ、アジ、ウナギなど、小型の魚の摂取がおすすめです。魚には、DHA以外にもタンパク質やビタミン、ミネラルなど健康によい栄養素が豊富に含まれているので、本当は毎日魚を食べることが望ましいですが、ハードルが高いと思われる方も多いかもしれません。弊社では手軽にDHAを摂取できる食品の開発に取り組んでおりますので、「缶詰」などのDHAを豊富に含んだ食品や、サプリメントに加え、「DHA入りリサーラソーセージ」などの特定保健用食品や「生鮮プレミアム活〆かんぱち」、「新鮮プレミアム鮪たたき」などの機能性表示食品もご活用いただき、日常生活において意識的にDHAを取り入れていただければと思います。

「DHA入りリサーラソーセージ」

「生鮮プレミアム活〆かんぱち」

「新鮮プレミアム鮪たたき」(ベイシア、南食品との共同開発)※写真はイメージです。

また、時間栄養学(※)の視点で、DHAの摂取による中性脂肪低減効果を調査した結果、DHAは朝食に摂取する方がより中性脂肪の低下を促すことが分かりました7, 8)。もちろん、昼や夜に食べても効果はありますので、ご自身のライフスタイルに合わせてDHAをうまく取り入れて頂ければと思います。

※時間栄養学とは:

「何をどのくらい食べるか」という従来の栄養学に、「いつ食べるか」という新たな視点を加えて、食餌のリズムと食の機能性との関係について研究する学術分野。食の機能性を高めるための至適摂取時刻 や、食を利用した睡眠や体内時計の積極的な制御などに関する研究が注目されている。

 

<参考文献>

1)Lancet, 1: 1143 (1971)

2)日本臨床栄養学会雑誌 25(4):293-302 (2004)

3)薬理と治療 36(4): 333-345 (2008)

4)治療学 43: 838-844 (2009)

5)Journal of Aging Research & Clinical Practice, 1(3): 193-201 (2012)

6)J Feline Med Surg, Dec; 24(12): e505-e512 (2022)

7)J Nutr Biochem, 52: 45-53 (2018)

8)Nutrition, 90: 111247(2021)

« »

この記事をシェアする
タイトルとURLをコピー