11月11日は「鮭の日」

11月11日は新潟県村上市の「鮭の日」

村上市役所 観光課 観光交流室

村上と鮭

村上と鮭のつながりは深く、平安時代に編纂された「延喜式」には越後国から朝廷へ鮭を献上していた記録が残っており、村上の鮭も含まれていたと言われています。江戸時代には、三面川の分流「種川」により、世界で初めて鮭の自然ふ化増殖にしています。また、言葉や料理など様々な形で、独自の鮭文化が色濃く残っています。村上の方言で鮭のことを「イヨボヤ」と呼びます。「イヨ」とは魚を意味する言葉で、また「ボヤ」も魚を意味する言葉です。魚と魚を重ねることによって、村上で魚といえば「鮭」であり、「イヨボヤ」と呼ぶようになったということです。また、料理方法は100種類を超えるほどもあり、頭の先から尻尾の先、内臓までも余すことなく大切に食す文化が残っています。遠い昔から、村上の人々にとって、鮭はなくてはならないものであり、鮭とともに生き、その中で独特な文化を育んできました。

村上藩士 青砥武平治

江戸時代中期になると、乱獲などの影響により、三面川に遡上する鮭が少なくなってしまいました。当時、鮭は村上藩を支える大切な財源でした。その窮地を救ったのが、村上藩士「青砥武平治」です。青砥武平治は、鮭の回帰性を利用し、保護しながら増やしていくため、三面川に産卵するための分流「種川」を造ることを考案しました。「安全な産卵場を造り、そこで生まれた鮭の稚魚が海に出て、約4年後、成魚となって帰ってくるだろう」という、当時としては非常に画期的な保護増殖システムです。村上藩では、「種川の制」として青砥武平治の考えを取り入れ、三面川に再びたくさんの鮭が遡上するようになりました。世界で初めて鮭の自然ふ化増殖に成功したのが、青砥武平治の考えた三面川の分流「種川」なのです。青砥武平治は村上藩の財政を立て直し、再び三面川に鮭の遡上をもたらした、村上の鮭文化を守った人物なのです。

三面川の鮭漁

三面川では、秋になると川幅いっぱいに『ウライ』と呼ばれる柵が設けられ、産卵のために遡上してくる鮭を一括採捕しています。これは、戦後中断していたものを昭和52年から鮭増殖を目的として再開したもので、遡上してきた鮭の行く手を阻み、2か所だけ開いている落し柵と呼ばれる密柵で捕らえ、採卵し、人工ふ化増殖を行っています。

また、ウライより下流では、『居繰網漁(いぐりあみりょう)』と呼ばれる伝統漁法が行われます。3艘の川舟を川の流れに乗せてひし形に広げながら使い、一艘に漁師が2人ずつ乗り、先行する1艘は網に鮭を追い、後方2艘の前方(下流側)の一人は櫂で舟を操り、後方(上流側)の漁師は水中におろしたサイ縄を握り、川を上って来る鮭が網にかかると舷を叩き呼吸を合わせて鮭を捕ります。現在は2艘の川舟で漁を行う場合もあります。

大川のコド漁

山北地区の大川や勝木川にも、晩秋から初冬にかけてたくさんの鮭が群れをなし帰ってきます。なかでも大川は昔から鮭漁が盛んに行われ、毎年鮭漁の時期を迎えると、鮭が帰ってくるのを心待ちにしていた漁師たちで、川原もにぎわい活気づきます。

大川の鮭漁は、古くから伝えられている「コド漁」という漁法で行われており、この漁法は、全国的に他に類を見ない大川独特の漁法です。

コド漁の最盛期は、10月から11月で、時期になると大川の河口付近はコドでうめつくされます。

村上の伝統的製法による塩引き鮭

村上の塩引き鮭は、古くからこの土地の独特な気候風土により作り上げられる逸品です。

塩引き鮭は、魚体をきれいにするためエラや内臓を取り出しますが、切腹を嫌って腹部を全部開かず一か所を残して切る「止め腹」にします。下ごしらえが済んだら、魚体の適量の塩を擦り込み約1週間寝かせたあと、たっぷりの水の容器に魚体を入れ塩抜きをしてから尾びれを上にして干します。城下町でもある村上では鮭に「切腹させない」「首吊りをさせない」と、独特の加工法で塩引き鮭を作ります。この様に塩引き鮭は、適量の塩加減と寒風熟成により、新巻鮭とは違ううま味が味わえる、まさに村上でしか作ることができないものです。

また、初冬になると各家々では塩引き鮭作りが始まり、家々の軒先に塩引き鮭が吊り下げられ、街頭のように連なります。城下町の雰囲気に鮭が溶け込み、村上の昔ながらの風景が味わえます。

このように村上の文化は鮭とは切り離すことができない関係なのです。村上市では鮭への感謝と良さを広めたいという気持ちから「鮭の日」を制定しました。「鮭」という感じのつくりが十、一、十、一と分解できることから11月11日が「鮭の日」となったのです。

軒先に吊り下げられる塩引き鮭

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