漂着したザトウクジラを観察

クジラの漂着(ストランディング)について(苦手な人は途中から注意。)

2023年12月19日に千葉県南房総市岩井川河口に漂着した個体を23日に見学してきました。

うちあがった岩井駅の隣駅、安房勝山駅の徒歩すぐの加知山神社には鯨塚があり、昔からクジラたちが身近な存在でした。「水産物の塚や供養碑」は日本各地にあるので近所を探してみて下さい。

昔は浜に弱ったクジラが打ち上げられた際に寄り鯨・座礁鯨・漂着神(えびすさま)として貴重な食料として利用されており、ありがたがられていました。

食料?食べても大丈夫?と現在の感覚では考える人もいるでしょうが、命を懸けて捕りに行かずにすむ食料としてまさに海の恵みだったのでしょう(もちろん漂着した時点の鮮度も重要ですが)。

現地に向かう前にチェック!潮見表

行く前に、到着時間をしっかり考えねばなりません。干潮は朝8時、満潮は13:45。できれば干潮を狙いたかったけれど11時過ぎに到着。潮が満ちるまでの2時間程度滞在して観察しました。

その間にチラホラ50名程度が見に来ていましたが、100m離れたところでサーフィンをしている人は、このクジラに気づいていない。そんな静かな状況でした。

岩井川の河口付近を捜す。

車で近づくと、あった!というか。いた!

より近くで観察!

↓今年2匹目のクジラ漂着だと、地元の親子が見学中。

↓お腹を上にして右が頭、左手前がしりびれ、左むなびれが見えている。

潮の満ち引きでヒレに砂を被った状態。ガスは一度抜けている様子で爆発の心配は無さそう。

↓しりびれ根元部分は色々な傷が。生きている時か流されている時のキズかは不明。

 

 

この先は少々ショッキングな写真になるので、大丈夫な人だけどうぞ。

 

 

 

現場では・・・鮮度が悪い魚の内臓の匂いよりはマシかな?というぐらいの耐えられるレベルの香り。

磯の香りが少し強くなった程度でした。

 

 

 

 

 

↓波や日差しの影響か、海側の黒皮が片側だけめくれて脂肪が見えていました。

左側に波も太陽光も当たる角度です。

↓なんでタイヤのゴミがあるの?とつぶやいた人が、「あ、皮か!」と気づく一幕も。

↓黒皮がめくれた脂肪部分に丸い跡が複数。二つは目立つけれど、治った跡も20個近く。

これはダルマザメの食痕だな??

↓反対側には、かじられた丸い跡

↓かじられて時間が経ったら、脂肪の層の上に黒皮が再生。

↓さらに時間が経って傷がふさがりつつある状態?

ダルマザメの噛み跡は新しいものから古いものまで30-40カ所程度見つかりました。

黒皮がめくていない部分の事も考えると100噛みぐらいかな?

生きたままかじられては怪我が治り・・・という状態は痛そうだけれど・・・・市場のマグロも同様に傷跡をよく見るので、死にはしないのでしょう。

付着生物達はいないか?

ウミガメなどの首のしわにはヨコエビがいるように、クジラの体表面にはクジラジラミがいるらしい。シラミと言う名前ながら、「ワレカラ」の仲間と考えれば可愛いもの。撮影できるかなとワクワクして探しましたが・・・・

何もいない・・・・遅かったか・・・。さすがに4日たっているし、クジラの体に鳥の糞が落ちてるし、人に取られたり鳥に食べられたか・・・。

胸ビレについていたはずのオニフジツボも刃物で肉ごと切り取られていて・・・ない・・・。見たかった・・・。

後日、正式な調査に同行した研究者からいただいた写真です。海側の砂に埋もれたヒレについていたそうです。7㎝近くの大きさ!フジツボに、さらに寄生している生き物も見えます。

↑プランクトンをつかむ蔓脚が出ています。

↓鯨側はクジラの皮に食い込んでいたそうです。

かたいの?柔らかいの?

シッポの方はかたかったけれど、お腹を上にしていてそちらはどうなのか?失礼、ごめんねと心の中で呟きながら、恐る恐る、つっついてみました。

ふわんふわん動く様子から、エサを食べる時にウネスが広がる柔らかい様子が分かりました。

また、このクジラは死んから打ち上げられたようですが、弱って打ち上げられてしまうと、体を支えきれずに自重で弱って死んでしまう様子も想像できました。

ストランディングした場合の処置方法

海に接していれば、どこでも「ある日突然!」という可能性があるストランディング。

「16メートルのマッコウクジラが漂着しました!」

「でかい!すごい!」ではすみません。重りをつけて海に沈める海洋投入の例では400万円の費用が発生するなど、その土地の人にとっても恐ろしい事件です。

「鯨類座礁対処マニュアル令和4年版」では、突然自分たちの身近な海にクジラが打ち上げられた場合の対処方法がわかります。

勝手に欲しい部位だけ切って持ち去ると、例えば海に引っ張るときに結び付けられなくなったり、内臓が飛び出て周囲に迷惑なことになってしまうので、利用した人たちで処分費用を負担しましょう!というルールのようです。

「責任が発生する」という言葉の意味が恐ろしいので、打ち上げられたクジラや海獣を見つけたら、市町村の関係部署に連絡する事をオススメします。

生きていたら海に戻すのが正解に思えますが、海外では尾に打たれて死亡した例もあります。

解体も大きなナイフを使うのでとても危険です。

安全第一で、無理をしない事も重要なのです。

あなたの身近にも海獣が?

「こちら」の地図から近くに打ちあがった記録がわかるので、近所で見られる可能性がある海獣を調べてみて下さい。実は身近に海獣達がいるのです。

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