潮干狩りは江戸の大人気レジャー 浮世絵から学ぶ楽しみ方

江戸前のレジャー 潮干狩り

最近はすっかり暖かくなり、ゴールデンウィークにかけて潮干狩りに出かけるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、潮干狩りは江戸時代においても大人気のレジャーでした。多くの浮世絵に潮干狩りを楽しむ人々の様子が残っています。

例えば、「江戸名所 品川沖汐干狩之図」という絵があります。

名前のとおり、品川の海で潮干狩りに興じる人々の姿を描いたものです。品川といえば今ではオフィスビルの街というイメージがあるかもしれませんが、当時は多くの人が海で遊べる場所でした。

国立国会図書館デジタルコレクションより

三人の女性が裾をまくって海に入り、手に取ったかごに貝を集めている様子が描かれています。その後ろには同じく潮干狩りに興じる人々の姿が点々としています。女性たちの背後では、ヒラメを捕まえた男性に子どもが近寄っている様子も見られます。絵の右端には、とっくりと盃を手に一杯やりながら様子を眺めているお兄さんの姿もあります。いずれも表情が明るく、はしゃぎ声が今にも聞こえてくるようです。遠くに浮かぶ荷船からも、当時の品川の海の様子を伺い知ることができます。

潮干狩りで採れるのは貝だけじゃない?

そしてこの浮世絵にも描かれているとおり、当時の潮干狩りで採れたのは、貝だけではありません。ヒラメやコチなどを手で拾うことができたといいます。江戸時代の俳諧師 宝井其角(きかく)は「親にらむ 平目を踏まん 汐干かな」という歌を残しています。潮干狩りに興じているうちに気づかずヒラメを踏んでしまった、それくらい身近にいるものだったというものです。

実際、「江戸自慢三十六興 洲さき汐干かり」(『洲さき』は現代でいうと東京都 江東区 東陽町あたりの地名)という浮世絵などにも、潮干狩りでヒラメと思わしき魚を素手で捕まえている姿が描かれています。魚を抑える男性と、それを見る娘さん方から、「わぁ、採れたー!」という声が聞こえてきそうです。

国立国会図書館デジタルコレクションより

魚貝を採らなくても楽しめる

潮干狩りで採れた魚貝は持ち帰って食べることができました。しかし潮干狩りの楽しみ方は、採って食べるだけではありません。上の絵の背景に、ちょうちんらしきものが付いた建物で休んでいる人が見えませんか?当時は飲食をしながら浜の景観や潮干狩りの様子を観ることも楽しまれていました。

「江都名所 洲崎しほ干狩」という潮干狩りを描いた浮世絵にも、干潟のそばには茶屋らしきものが立っており、潮干狩りの様子を見物する人の姿が描かれています。飲食を楽しみつつ、潮風に吹かれながら海を眺める心地よさは格別だったことでしょう。

国立国会図書館デジタルコレクションより

潮干狩りに行ってみよう!

うららかな日差しの中、心地よい水の冷たさを味わい、魚貝と戯れる。海の恵みに舌鼓を打ち、美しい浜の景観を眺める。当時も今も、潮干狩りは海辺をまるごと楽しめるイベントなのだ、と改めて思います。

潮干狩り、なんだかやりたくなってきませんでしたか?

現代でも、東京湾をはじめ各地の海で潮干狩りを楽しむことができます。

 

この記事は、江戸時代の魚食文化・水産物流通について調べている「鷹 輝政」さんが書きました。

美味しい魚を扱っている「㈱フーディソン」で働いているそうです!

 

潮干狩りを楽しむのに役立つ・・東京湾で採れる貝の種類と写真は「こちら」


採れた貝を「深川丼」にして食べるのもオツですね!

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