スルメイカが獲れない理由。獲り過ぎ?温暖化?クロマグロ?

一昔前は一杯100円で船凍イカ(獲ってすぐ船の上で冷凍した刺身で食べられるイカ)が買えた時代もありましたが、2024年現在、一杯600-1000円程度と相場が上がっています。

不漁の原因は一つではないと考えられていますが、どのような事が考えられるでしょうか?

海の中のイカ(資源量)が減った?

1968年のピーク時に56万トン獲れていたスルメイカ。2022年度は3.7万トンと日本での漁獲量は大幅に減っています。

サンマなどと同様に日本以外の国も獲り始めた事、どれほど獲っているか不明な国があることも資源量が減った原因と考えられています。一例が「こちら」

令和6年の「水産研究教育機構の報告」16ページにある「図3-1国別漁獲量の推移」をみると、ザックリながら、日本しか獲っていなかったイカを1995年頃から韓国も本格的に獲るようになり、2000年頃から中国も獲るようになり、3国で合わせると同じ量獲れていたイカが、2020年から3国合わせても突然取れなくなったという感じです。

中国の数値は衛星から見える船の灯りを基に推計した仮定の量です。

どれだけ獲っていいかを決めるためには、資源を共有する国ごとの話し合いやルール作りが必要ですが、獲っている量が不明な国がある以上、取り決めできないのが苦しいところです。

資源量が減っている事は確かです。ただ、人が獲った事だけが原因だと決めつけるのは危険です。

見えない海の中で食物連鎖の中に組み込まれている自然の生物を利用する人間は、他の可能性も考えながら、海の資源を利用していく必要があります。

ということで、海洋環境の変化や、漁師さんの意見なども踏まえて可能性を紹介していきます。

温暖化で卵を産む環境・孵化後の稚魚の生きやすさが変わった?

スルメイカは東シナ海から日本海の海底(水深100-500m)で産卵します。

産卵後3-5日でふ化した赤ちゃんは海底から海面に浮上しますが、生き残りやすいのは19.5~23℃と考えられています。

目に見えない海の中ですが、ブリが北海道で獲れたりイセエビが三陸で獲れるように他の魚が移動している「こちら」を考えると、スルメイカが卵を生む場所や育つ環境が温暖化の影響で大きく変化してその影響がイカの資源量に関わっている可能性が考えられています。

例えば産卵場所。卵が孵化するのに適した水温は決まっています。温暖化で今までの場所が適さなくなって北に移動した場合、適した温度になったとしても、環境が変われば生き残りにくくなります。

海底で孵化してから表層に上がった時に、天敵が高水温では活発に動いているかもしれません。鮭が川から海に下った時に今まではいなかったサバの群れが待ち構えるようになったのと同じことが起こっているとしたら・・・・。鮭については「こちら」

成長する時に、当然栄養がある海域が望ましいのですが、潮の流れの影響で沿岸から離れると栄養が足りずに育ちにくくなります。黒潮はそもそも栄養が少ない潮の流れなので、大蛇行する事で栄養が少ない海域が増えてしまうと成長しにくくなりそうです。サンマは沿岸から離れて成長が悪くなったことがわかっています「こちら」

これらのような事からスルメイカが成長するのに不都合なことが起きていると考えられています。

スルメイカが耐えられる下限水温は約12℃と言われています。イワシの群れが北海道で仮死状態で打ち上げられるように、温暖化に関連した極端な天候の変化なども増えているので、産卵前の親イカに寒い水の塊に接する事で影響が出る可能性もあります。

天敵のクロマグロが増えたため!?

大型のクロマグロが水揚げされたニュースを聞く機会が増えています。

クロマグロと言えば青森県の大間!と言われるのは、冬に大間に集まった肝臓パンパンなスルメイカをたくさん食べているからです。そんなイカ好きのクロマグロ。数が増えたことでイワシもイカも獲れなくなっていると漁師さんからよく聞くようになりました。

細かく読み解いてみると、2009年に1万tと推定されたクロマグロの親魚資源量(卵を産めるクロマグロ:60Kg4歳だと半分が卵を産む)は、2025年には15万t程度と15倍に増えました「こちらの7ページ目」。一尾100Kgとして考えた場合、増加した重量14万tは140万尾のクロマグロになります。

10年前より140万尾多くのクロマグロが海の中を泳いでいるので、イカを食べているだろう!という事は想像しやすそうです。船よりも俊敏に追いかけられそう??

クロマグロ増えた?減った?実際どれくらいのエサを食べている?について詳しくは「こちら」

獲れる場所や季節がずれた?

黒潮大蛇行のように潮の流れが変わることで水温が変わり、従来獲れていた地域で取れなくなった、時期がずれた可能性があります。

旬のはじめ、はしりの時期に昨年比半分以下!競り中止!と報道されたり、従来水揚げがあった港では獲れずに、他の港で獲れたり、時期がずれて獲れるようになる場合があります。

温暖化の影響で時期がズレたという事も言えそうです。

元々イカは年ごとに潮の流れで獲れる場所も変わるため、船が動いて漁場を探したりしますが、全体的にずれると探しきれない・獲れない事につながります。

船・漁師が減った

イカが取れないと儲けが少なくなるのでイカを獲る船を新たに作れず、漁師さんも減ってしまいます。

漁師さんが減るとその分イカの水揚げ量は減ります。

イカ釣り船は近づくとスミが付いているのが見える事も。

2012年には120隻だった大型のイカ釣り船が2023年には44隻に減少(全国いか釣り漁業協会)しています。

イカを獲り続けるために何ができる??

漁獲量はイカが水揚げされた量で、海の中のイカの量、漁師さんがイカを狙って働いた時間等によっても変わります。

様々な魚種でも考えられていますが、日本国内はもちろん、各国で話し合いながらとり過ぎないようにすること、そしてイカが増えるための更なる生態の解明が必要です。

イカは一年で生涯を終えるので、マグロなどの長寿命の生物と比較すると、資源量は比較的早く回復する傾向があります。

その様な種類ごとの特性を考える事で、美味しいイカを食べ続けられるようにしたいですね。

 

サンマが獲れない?小さい?その理由は「こちら」

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