地球温暖化による水産物・魚介類への影響
地球や海が暖かくなると、魚はどうなるの?
人間が暑すぎ・寒すぎが嫌なように、魚もそれぞれ快適に過ごせる水温があります。
そのため、海が全体的に暖かくなると、日本の近くにいる魚達は少しでも生活しやすく・生き残りやすくなるために、寒い海(北の海)に移動します。
移動した先で魚達は幸せに暮らせる??
移動した先が適した水温でも、他の環境が変わると生きるのが難しくなります。
食べる餌があるのか、住む場所があるのかは、とても大事です。
例えば岩場で隠れながら生活していた魚に、隠れる岩が無い砂地で生きろ!というのは無理な話です。
産卵場所などもあるのかも心配ですね。
生き物はその場所で生き残れるように長い時間をかけて進化してきて、今の形や色、生き方になっていますが、温暖化で環境が変わるスピードが速すぎると、うまく生きられない場合も出てくるのです。
移動できる種類は・・・長距離ランナーばかり??
一年中回遊して泳ぎ続けている長距離ランナータイプの魚も入れば、ゆっくりと泳ぐタイプの魚もいます。
大雑把には、長距離ランナーは赤身、ゆっくり泳ぐのは白身でしたね。詳しくは「こちら」
泳げないエビやカニは、潮の流れで移動する
泳ぐのが苦手なタイプでも、稚魚時代等に海流に流されることで北の海に移動する場合もあります。イセエビは長距離歩いて移動するのは苦手ですが、流れに乗って移動できる小さなプランクトン時代であれば移動が楽なので、最近は宮城県や岩手県でも獲れるようになっています。
体が小さい時代に北に移動しても、寒い冬に生き残れず全滅する種類もいますし、温度は問題なくても成長しにくい海に流されてしまうと成長できません。
ズワイガニの場合は、3月に孵化してから6-7月に着底するまでに適さない環境に流されてしまう事もあります。産卵場所≒親まで成長できた海底なので、潮の流れが大きく変わって、見知らぬ海底に降りてしまうと困るのです。
熱帯魚が見れるチャンスが増えた?
冬に突然冷たい水が流れ込んでも長い距離泳げない場合は、温かい海まで戻れずに冬と共に死滅する死滅回遊魚とよばれる魚がいますが、今までは死んでしまっていた場所が暖かくなる事で生き残る例が増えて分布(住む場所)が広がることもあります。
このように、移動する方法も、生き残る方法も種類によって大きく違います。
温暖化の減少を受けている魚種
ここで、温暖化の影響を受けて北上したと言えそうな代表的な魚達を紹介します。
元々獲れていた地域では減少した、獲れていなかった場所では増えた!ということになります。
鮭(シロザケ:秋鮭)
北海道では2010年頃から鮭が獲れにくくなりました。魚種によって好む水温は異なりますが、鮭は水温24℃以上になると生きていけないと言われています。
鮭が獲れにくくなった分、ブリが多く獲れるようになったのです。
ブリ
氷見の寒ブリで有名な石川県も2010年ごろからブリが獲れにくくなりました。
ブリが獲れにくくなったころから徐々にサワラが獲れるようになっています。
サワラ
石川県の他にも、関西に多かったサワラ。
2021年に東京湾ではそこらじゅうでサワラがはねていました。ビギナーでも釣れたほど。
このように、全体的に北側に移動している感じがわかると思います。
サンマ
獲れなくなった理由の一つが温暖化ではないかと言われていますが、他にも理由があるようです。詳しくは「こちら」にて。
クジラ・サメ等の大型種
普段見えない場所でクジラが見れた!よかった!自然って素敵!と喜ぶ声がニュースで見られることも。
逆にサメの場合は、普段見られない場所でサメが出没したことで海水浴ができないし、漁業被害も増えて困ったもんだ。となります。
実体は・・・温暖化による過ごしやすい海水温や、魚達の移動に伴って、一緒に大型種も移動していて、普段はいなかった場所で餌を食べるようになっただけ?という事が言えそうです。
生き物が移動した先で起きる問題
今までいなかった生き物が増えると・・・何かの影響が出ます。
サメが増えれば魚が食べられてしまったり。エイが増えると貝を食べつくしてしまったり・・・。
見えない海の中で、これまで経験が無い事なので予想がしにくいのが困ってしまう点です。
ヒトが関係する事は、今まで食べていた魚と違うと食べ方がわからないという単純な話もあれば、日本海のゴマフグと太平洋のショウサイフグが北上して雑種が増えることで、毒の見分け方が困難な雑種が増えているという話もあります。
もちろん、漁業者や市場関係者はその道のプロなのでそのような雑種フグが流通しないように目を光らせているわけですので消費者の皆さんは安心しても大丈夫ですが、色々な影響が出るということは覚えておいてほしいですね。
一生涯移動しない種類の場合
泳いで移動できる魚は、自分好みの水温の海域まで移動するので、その海域からいなくなる経過が見えにくく、漁獲量を見てようやくわかる程度ですが、一度海底に着くと生涯動けない海藻などは、定着してから大人になれているか食べつくされてしまったかが同じ場所で観察できます。
つまり、今まで普通に生きていた生き物が温暖化によってどのような影響を受けているかが観察できます。
ワカメ
ワカメのハズなのに・・・緑色じゃない!と思った人は「こちら」で納得してください。
ワカメの成長しやすい水温は18~24℃で、秋から成長して春に収穫されます。
今までは魚が必要以上に動き回らなくなる時期(寒いと魚が動かなくなり、脂が多くなるお話は「こちら」へ)、つまりは秋頃から大きくなるゾ!と成長していましたが、いつもより暖かい海では魚が活発に動いて海藻を食べてしまったり、温かいためにワカメが成長しにくくて大きくなれない状況が増えてきています。
ワカメよりアマモ、アマモよりコアマモの方が暖かい海水温に強いなど個性があるので、温かくなっても何かしらは生きていくのでしょうが、全国規模で「磯焼け」と呼ばれる海藻類をウニや魚が食べてしまう状況が増えています。
海藻たちは稚魚の隠れ家にもなっているので、魚も一緒にいなくなってしまう事につながります。
サンゴ礁の白化現象
沖縄の浅い海に多いサンゴ礁。
サンゴは、褐虫藻(カッチュウソウ)という藻の仲間が光合成(光でエネルギーを作る)で作ったエネルギーをもらう事で生きています。褐虫藻はサンゴに住ませてもらう事で生活しています。
「マンションに住ませるからご飯を作ってね。ご飯くれたらもっとマンション大きくするよ!イイネ。」という感じ。
台風の波でたまに適度に折れることが沢山の種類が保つことにつながっており、多少の波はヘッチャラです。壊れても直す感じです。難しい言葉では「中程度攪乱」といいます。
が、ご飯を作る係の褐虫藻は30℃を超える熱い海では少なくなり、熱い時間が続くと褐虫藻がいなくなります。これが白化現象という、マンション係のサンゴまでもが死ぬ状況です。
同じ海でも、沖から冷たい沖の水が入ってきやすい地形だと褐虫藻がいなくならないですむこともあり、サンゴが生き残る場合もあります(だから色々な地形が大切なんですね)。
潮の流れが変わる??北海道での赤潮など
お風呂を沸かしたときに、上だけが熱くて下が冷たい!という経験がある人もいると思います。
このように水は、温度によって重さが変わります。(4℃の水は一番重いので、湖などが完全に凍らなければ魚達は海底で凍らずにすむ?というのは偶然かもしれませんが、超重要だったりします。)
温暖化によっていつもと違う流れができてしまうと、いつもは来なかった流れに乗っていつもはいなかったプランクトンが発生してしまう例があります。「こちら」から。
このように温暖化は、一種類の魚だけでなく、海域全体に関わる問題にもなるのです。
何ができる?温暖化対策
地球はつながっています。だからこそ皆ができることもあります。
電気をこまめに消す、ごみを増やさない、食べ物を残さない等、家でできる事もたくさんあります。
意味ない!なんて思わずに、一人一人の積み重ねが大事です。
遠くの食べ物ではなく地元の食べ物を食べるというのも意味がありそうです。
名前を知らない魚達も食べて下さいね!おすすめは↓ツバクロエイとかの「未利用魚」ですね。
食べ方は「こちら」!
個人では難しいけれど、貝を砕いて海洋アルカリ化にするなどの話も「こちら」で紹介しています。
地球温暖化とは
地球が暖かくなることを地球温暖化と言います。
現在は人が排出する温室効果ガスが原因で地球が暖かくなっています。
地球が暖かくなると、氷河が溶けて海面が上昇したり、異常気象(今までになかった大型台風やハリケーン、乾燥による大規模な山火事など)が起きたり。
歴史や自然のサイクルの中でゆっくり起こる分には生物もゆっくりと適応して生き残りますが、現在の温暖化のスピードは速すぎて追いつかないことが問題です。
温室効果ガスとは
冬でもイチゴが育つのは、温室のおかげですが、地球の周りに温室効果ガスがあると、今までは宇宙に逃げていた熱(暖かさ)が地球に戻ってきます。そうする事で地球が暖かくなります。
温室(グリーンハウス)と同じような地球を温かくすることに効果があるガスを温室効果ガスと言います。
二酸化炭素、メタンなどで、化石燃料(ガソリンや石炭等)を燃やすことで発生します。
逆に、温室効果と逆の働きをするものもあります。太陽の光をそもそも入ってこないようにするような形にすれば、地球は寒冷化します。マンモスが反映していた時代です。
イカスミみたいなモノを地球の外側にまけばいい!とも思いますが・・・そう簡単にはいきません。
一人一人の考えが大事です。