ヒスタミン 食中毒を考える

ヒスタミンと うまく付き合うために

こどもにとって必須アミノ酸のヒスチジン。これがバイキンによって分解されるとヒスタミンがつくられます。ヒスタミン食中毒は低年齢に多い食中毒で、顔が赤くなったりじんましんが出る症状があります。

聞きなれない「ヒスタミン」で「食中毒」と聞くと、怖いかもしれませんが、花粉症の人がかゆくなったりするのも花粉が体内でヒスタミンを作り出すからで、ヒスタミン自体は結構身近な存在でもあります。

また、ヒスタミンは鮮度の落ちた魚の他に、発酵食品(味噌、醤油、チーズ、ワイン等)にも含まれるため、それらをすべて避けて生活する事は現実的ではなく、注意したうえでうまく付き合っていくしかない物質です。

また、個人差がありますが、食物アレルゲンが体内に入ると、人の体内でヒスタミンなどの化学物質が合成され、ヒスタミンによってアレルギー反応が出ます

ヒスタミン食中毒とアレルギー反応の原因物質は同じヒスタミンなので、実は、見極めができておらずに混同している場合もあるのが現状です。

魚に関するヒスタミン食中毒について

赤身魚に多く含まれるヒスチジンを、海水中や内臓内のヒスタミン生成菌が分解してヒスタミンがつくられます。内臓を素早く取り、海水を洗い流して冷やせば心配ないのですが、一度作られたヒスタミンは熱でも壊れず(100℃3時間でも分解されない)、食中毒の原因となります。

厚生労働省は化学性食中毒に分類しており、死者は無く、症状が比較的軽く短時間で治ることから家庭内で発生した場合などは届け出がされない事が多いと推察されています。

一般的に食品100gあたり100mg以上の場合に発症するとされていますが、摂取量が問題なため、濃度が低くても多く食べれば発症します。大人一人当たり22-320mgで発症すると言われており、国内での基準はありません(くわしくは「こちら」)。

ひと昔前よりは断然、減っている!心配しすぎない事!

冷凍技術、流通方法は格段に向上しています。

魚がしっかり冷やされて運ばれるようになり、加工中も温度や時間管理が行われてヒスタミンの発生は抑えられ、食中毒件数は減っています。平均で年間10件程度発生しますが、過去と比較して規模も小さくなっています。

ワインやチーズ、醤油やみそなどの発酵食品でも、発酵過程で微量ながら生成される例も知られており、食中毒が怖いために魚をはじめとした、これらの食品を食べない事は現実的ではなく、魚は子どもにとっての必須アミノ酸のヒスチジンを含むため、バランスよく食べるために正しい知識を持ってください。

 

ここからヒスタミンの詳しい情報です。食べ物は全て何らかのリスクはありますが、その中でも安全においしく魚を食べていただくためにお付き合いください!

〇ヒスタミンとは?

ヒスタミンは海水や内臓中の「ヒスタミン生成細菌」が、マグロ、カツオ・ブリ・サバ・サンマなどの赤身や青魚に多く含まれる「ヒスチジン」というアミノ酸を分解することで生成される化学物質です。

食品分析開発センターHPより引用

ヒスタミンは非常に熱に強く、一度魚体内に生成されてしまうと、煮ても焼いても壊せないので、加熱調理前の生の青魚でヒスタミン生成細菌を管理して、増やさないことがヒスタミンの管理にとって重要です。生食する場合は魚を獲ってから食べるまで、加熱調理する場合は魚を獲ってから加熱するまでの温度と時間の管理が重要となります(低温・短時間で扱う)。

〇保育園での食中毒と営業停止事例

2020年11月の墨田区でだしパック(カツオブシ)での事例、2021年の10月の武蔵村山市の事例があります。

墨田区例では、報道によってだしパックの「煮すぎが原因」と報道されましたが、ヒスタミンは煮すぎる事で増えないので関係者同士でおかしいなぁ?と話していましたが、結果としては煮過ぎによって増えるわけではないと後から情報が入りました。

また、営業停止処分が3か月後に取消されましたが、当初の報道以降情報なく、誤解が生じている状態です。「こちら」に詳しくまとめました。給食関係者はご参考にどうぞ。

〇ヒスチジンは子供にとって必須アミノ酸!

ヒスタミン分解前のヒスチジンというアミノ酸は、マグロ、カツオ・ブリ・サバ・サンマなどの青魚に多く含まれています。これはヒトの体にとって非常に重要なアミノ酸です。大人の体ではヒスチジンを作れますが、子供の体の中では作れないので、子供たちにとっては必須アミノ酸です。ヒスタミンを生成させないように管理して、ヒスチジンをたくさん含んだマグロ、カツオ・ブリ・サバ・サンマなどを子供たちにはたくさん食べてもらいたいですね。

こんな感じで機能性表示食品もあります。

ヒスタミンが怖いから魚を避けよう!と思うのはもったいないですヨ。

〇予防方法(大量調理の場合:給食など)

給食などでの大量調理では、既に短期間低温加工などが徹底されています。

大量調理か少量かでも手法が変わるため、冷凍を選択したり各現場で注意しています。

どの様に加工されて届く原料か(船で冷凍され、冷凍のままカットされたものか、生のまま運ばれてくるか等)で注意点も変わります。そのあたりを把握して、冷凍状態なら時間が止められているので問題ないと判断したり、生のまま氷漬けで2日以内なら問題ない等と各自で判断してください。

〇予防方法(家庭の場合)

普段の生活ではお店からの持ち帰り時にも「魚を冷やす」こと、解凍は常温を避けて速やかに溶かすことが重要です。また、極力早く食べきる事が予防につながります。

魚を購入後、「帰宅時まで」氷で十分に冷やしエラや内臓は素早く除去し真水で洗い流すこと(海水と内臓にヒスタミン生成菌が存在するため)、冷凍品は常温ではなく冷蔵庫か流水で素早く解凍すること、鮮度が落ちた魚はあきらめること(加熱してもヒスタミンは分解されない)、喫食時、唇や舌先に通常と異なるピリピリした刺激を感じた場合は無理して食べずに処分する事が身を守ることにつながります。

低温でもヒスタミンを生成する種もあるため、干物もなるべく早く食べ切りましょう。丸干しの干物と、内臓を除去した干物では丸干しの方がヒスタミンを多く生成される頻度が高いデータもあるため(ヒスタミン生成菌が存在する内臓が含まれるため)干物は冷凍することもリスクを軽減させる方法と言えます。

〇大型の赤身魚(マグロ・カジキ)に多い?

ゼロではありませんが、冷凍技術の発達で、過去の情報になりつつあります。

ヒスタミン食中毒は、①赤身魚で多く発生する、②メカジキのような大型魚は、他魚種よりヒスタミンでの食中毒が高い傾向がある(冷却に時間が必要である事、製品になるまでに冷凍と解凍を繰り返す事が比較的多いことでヒスタミンが生成されやすい)、と昔は言われていましたが、2011-2016年の食中毒データから魚種を拾ってみた所、ブリ11件、イワシ10件、サバ9件、サンマ8件、マグロ7件、シイラ4件、アジ・カツオ3件、干物2件、カジキ1件であり、届出データからは特に読み取れませんでした。

生産量や家庭での消費に基づく食中毒件数の比較を検討中ですが、サンマの場合は年間46,000トンの漁獲量に対して2-3件の食中毒発生など、可能性が非常に低い事も、食べるか避けるかの参考に覚えておいていただきたいです。

〇大型魚で多いと言われた理由は?

一昔前は、数100キロを超える大型魚を冷凍するまでに時間がかかったり、常温に近い状態で解凍して切ってまた冷凍して、それを解凍して調理に使用する海外での加工場の例もあったようです。

現在は、-60度で船内凍結するマグロやカジキ、獲ってすぐに氷水に浸けるサンマなど、冷蔵・冷凍技術の発達と、低温での流通・加工方法の確立などでリスクが減少しています。

サンマも冷蔵技術が発達して関東でも刺身で食べられる鮮度のモノが増えました。見えないところで冷凍技術・加工技術・管理方法も発達していますのでその恩恵を受けてくださいね。

解凍時間や加工時間・加工温度等を管理する事でヒスタミンが増えないように考えられているのです。

〇ヒスタミンと食物アレルギーを混同しないで!

ヒスタミンによる蕁麻疹とアレルギーの症状は似ています。

そのため、鮮度が落ちてヒスタミンを含む魚を食べて食中毒を起こし、魚アレルギーと勘違いする場合があります。この場合の原因はヒスタミンなので、ヒスタミンを含まない鮮度の良い魚を食べた場合、症状は出ません。

家庭での判断で原因を特定しないまま「魚は全てダメ」と判断してしまう場合もあるようですが、「魚」を一括りにして全魚種を避ける生活は、その後の人生にとっても負担となる事から、医師の判断が望ましいと感じます。また、魚アレルギーと言っても、様々ありますし、幼少期のアレルギーの場合は、小学生ぐらいでアレルギーが無くなる事も少なくないため、やはり医師の判断が重要となります。

※ヒスタミンの偽アレルギーのうちの半分ぐらいはアニサキスアレルギーではないかとする説もあり、研究が望まれる分野です。

「サバで必ずヒスタミン食中毒になる!」と考えている方は、調理方法がよほど悪いか、アニサキスアレルギーの可能性が高いことも考えてみてください。

アニサキスアレルギーは、そばアレルギー等と同様に個人差があります。

また、冷凍しても加熱しても壊れない(缶詰等)アニサキスアレルギーもあります。心配な方は病院でアレルギー検査を!(助成対象のアレルギー検査情報を含む保育園でのヒスタミン食中毒情報は「こちら」

 

魚の保管の基本を守って極力早く食べきれば、心配し過ぎる必要はなく現実的な生活のためにうまく付き合っていくべきヒスタミン情報でした。

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