磯焼けとは?海草を食べる魚たちが悪い?
磯焼けとその問題点は?
藻場(もば)と呼ばれる海藻たちが生えている場所は、稚魚の隠れ家にもなり、エサ動物も多く潜んでいます。
磯焼けとは、海藻や海草を魚やウニが食べてしまい、焼け野原のような状態になった海底の状態を指します。
磯焼けによりエサも住みかも無くなる事で、その海から魚も一緒にいなくなってしまう事につながり、「sea desert:海の砂漠化」とも呼ばれます。
磯焼けがおきると、藻場が空気中の炭素を固定する役目も期待できなくなります。
また、藻場から流れだした「流れ藻」は海の中を漂う際に雑魚の隠れ家になりますが、藻場が無いと海の中で敵から逃げられなくなってしまいます。
浮きの下の小魚。狭い場所や障害物があると天敵から隠れたり逃げたりしやすい。
磯焼けはなぜ起こる?
色々な原因が言われていますが、全国的に広がっている現在の状況は温暖化の影響が大きいと言われています。
①海水温が高すぎて海藻が死んでしまう
生きていけない水温になることで枯れて流されてしまい、海藻類が無くなります。
黒潮の大蛇行等で年によって海水温が高くなることがあります。
②温暖化で魚が活発になった
ワカメの成長しやすい水温は18~24℃で、秋から成長して春に収穫されます。
ワカメは今までは魚が動き回らなくなる秋頃から成長していましたが、海水温があがった結果、魚が活発に動いて海藻を食べてしまうと大きくなれません。
元からそこに魚たちはいたのですが、水温が高くなったことで活発に動くようになります。
「こちら」に研究によると、アイゴが海藻(アラメ)を食べる量は・・・
20℃:90g、17℃:50g、15℃10gとのこと(一日1kgあたり)でした。
水温が3℃で2倍、5℃高いと9倍も食べてしまうという事で、成長分より魚が食べる量が多ければ、その海から海藻は無くなってしまいます。特に成長する場所が限られている海藻類は成長点を食べられると増えられなくなり減る一方です。
そのような結果、温暖化の影響で海の中のバランスが崩れてしまい磯焼けが全国的に問題になっているという事です。
・・・・寒いと魚が動かなくなり、脂が多くなるお話は「こちら」
他にも、台風で全てが流されたり、海藻が光合成できない状態に泥が積もったり、育つ栄養がなくなったりする事でも磯焼けは生じます。
一方で沿岸でも深場が近くにあり沖から海水が流れ込んで海水温が高くなりにくい場所では藻場が残っていたりします。そのような場所が供給源となって藻場が広がればいいのですが・・・。
磯焼けの原因になる魚は悪者??
今までもいた魚達が普段通り自分達が食べてきたエサを食べているだけなので、突然悪者にされるのもカワイソウな気がしてきますね。
でも、食べる量が増えた分の魚をヒトが食べれば藻場も守れるハズ??
こんな魚を見たら食べましょう!ということで覚えてくださいね。
※海藻類を食べる魚は、潮の香りが強めなこともあります。牡蠣のようにレモン系の香りにすると食べやすくなります。
アイゴ(バリ)
トゲに毒があるがトゲを切ればさばける!「こちら」
ニザダイ(サンノジ)
尾びれ近くのガラス質の武器に注意。さばき方は「こちら」
イスズミ
磯を群れで泳いでいる事が多い。
刺身もうまい!磯の香りもするけれど、貝好きは特におススメ!
ブダイ
とぼけた感じの顔。ウロコは大きく指でもとれる。煮付けが旨く。
ウニ ※勝手にとってはダメな場所がホトンドです!
磯焼けで身がやせて食べる場所がないため、キャベツを与えるキャベツウニ「こちら」を聞いた人も多いハズ。
ウニも悪者のように言われることがありますが、普段通りであれば・・・問題なかったハズなのです。
いや、それでもワルモノだ!と思う人は、海藻類を食べるサザエもアワビも悪者にしていいかもう一度考えてみて下さいね。
サンゴを守るために、ブダイやニザダイなどを守るハワイの例
ハワイではサンゴ礁を守るためにニザダイやブダイを守る例があります。「こちら」
サンゴより海藻類の育つ速度が速くサンゴが成長する日光を奪ってしまいます。
そのため海藻類を食べる魚種を捕獲しないことでサンゴが育ちやすい環境になるのです。
観光を優先するハワイでは、海藻よりもサンゴ重視という考え方です。
このように、しっかり研究して、その結果から少しだけ人の手を加えることでバランスがうまく守れることもあります。
人と自然との共存の難しさ
海に限らず山でもいろいろ問題があります。ニホンオオカミが絶滅して天敵がいなくなったシカは増える一方。
放置すると山の植物が食べられて土砂崩れなどが起きてしまいます。
鹿の食害を避けるために木に網をかけたりしますが、海の中ではそれも一苦労。
鹿が入らないように柵を作ると、その内側では色々な植物が生えるようになります。
鹿を害獣としてハンターが撃ったりもしますが、陸でも難しいこのような対策。
海の中ではもっと大変です。そこで諦めるのか、どうするか。
あきらめずに頑張っている人を支えるために何ができるか。
海や魚だけではなく、広い範囲で考えることで答えが見えてくるのかもしれません。