ホタテの稚貝大量死 人が食べても大丈夫? 温暖化による影響も?

ホタテ貝 斃死の原因は?人が食べても大丈夫?

1億8千万粒のホタテの稚貝が斃死したと判明した2023年春。

大量死後に、残ったホタテは人が食べて大丈夫??と心配になる人もいるでしょう。

貝毒??と気になる人もいるかもしれませんが、大量死と貝毒は無関係です。

斃死の原因が人の食中毒につながることはありませんし、死んだホタテは軽かったり、殻が開くので出荷されません。

漁師さんにとっては大きな問題の大量死。風評被害が広がらないように、しっかり説明します!

斃死(へいし)とは

魚や貝が死ぬことを斃死と呼ぶことがあります。文字通り斃れて(たおれて)死ぬことです。

自然界では密度も低く、死んでも他の生き物が食べたり分解されるので目立たない事がほとんどですが、養殖の場合や沿岸部では目につくので目立ちます。

どんな理由・原因で死んでしまったのかを考えていきましょう。

ホタテ大量死の理由や原因

ケガで弱った時にエサを食べられずにエネルギー不足で死ぬなど、原因が組み合わさることもあるため、どれか一つが原因に特定する事は難しいですが、大体下記と言われています。

①ぶつかり合い、ケガで弱って死ぬ

網やかごの中で育てる場合、周囲のホタテ貝とぶつかってケガをします。

県外から運ばれる際にケガをする場合、風やヤマセ(山背)による波、潮流でもぶつかり合う事があります。

海面に近いホタテが海底近くより多く死んでいる場合は陸からの風、深場は潮流など大体の理由がわかっても、潮流を停めるわけにもいきません。

殻の一部がめくれている状態の稚貝。ぶつかったのか?

②はさみ合う(噛みあう)ことで、ケガをして弱って死ぬ

網やカゴの中で育てる場合、周囲のホタテ貝とはさみ合うことでケガをすることがあります。

③餌が少なくて死ぬ 過密養殖・エサ不足

効率よく育てるために一カ所にまとめて過密養殖しすぎると、エサとなるプランクトンが少なく、成長できずに死ぬ、餓死のような状態になる場合があります。海の中のエサは一定なので一枚ごとの食べる餌が少なくなるという事です。

例年同じ密度で育てていても、日照の関係でプランクトンが少ない場合等も同様です。

④温度が高すぎて死ぬ 温暖化・高水温の潮による影響

北海道や青森が主要産地のホタテは冷たい水で育ちます。親のホタテは20℃、稚貝は23℃を超えると成長が停まり、エネルギーを消費してしまい死んでしまうことが分かっています。

過去には昭和50年に陸奥湾で津軽暖流が流れ込んだことで大量死が起きました。

温暖化の他に、太陽光や無風・潮流が停まることにより海水温上昇が生じる事もあります。

湾などの浅瀬や比較的南側の養殖場で影響を受けやすい傾向があります。

⑤塩分濃度(海への排雪による可能性)

実験室レベルでは塩分濃度を下げると死亡率が上がる結果が出ていますが、実際の排雪量が海の塩分濃度が変化するほどではないと考えられます。

斃死を避けるには

過去の経験を生かして斃死しないように、水温が高い期間は水温が低くなる深場にホタテを移動して養殖するなどで対応し、過去より高水温でも、過去より低い死亡率になる地域もあります。

ただ、高水温から逃げられる深場がない地域では死亡率が非常に高くなったり、逃げられないほどの広い範囲での高水温の潮流には対応できずに大量死につながることもあります。

赤潮なども同様ですが、水産業は海の幸を享受できる反面、自然相手の大きな動きにはどうしようもない一面もあります。とはいえ、人が食べるには海の資源も重要であり、地域経済のためにも水産業は頑張っていかなければなりません。

皆さんができる事は・・・食べて応援する他、温暖化防止のためにスイッチをこまめに切る、ゴミを最小限に、でしょうか。

 

稚貝の斃死について詳しくは下記参照ください。

「ホタテ稚貝の冬季へい死原因について」(青森県産業技術センター)

死んだ貝が開く理由は「こちら」

貝毒については「こちら」

魚介類の大量死・打ち上げ

他にもいろいろある大量死・打ち上げ。心配せずに大丈夫なので、なるほど!と思っていただければ。

「イワシ大量死」

「ボラ大量死」

「トラフグ大量死」

「ハマグリ・ホッキガイ大量打ち上げ」

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