水産物の寄生虫 (無害の寄生虫も含む) 食中毒を考える 

水産物の寄生虫による食中毒

過去7年に厚生労働省に食中毒として報告があった寄生虫は、水産物ではアニサキスとクドアが大半です。それ以外ではホタルイカ2件、サワガニ1件のみで、いずれも家庭での調理の結果でした。

淡水生物の生食や、ホタルイカの踊り食いが危険なのは、秋サケのアニサキスと同レベルの「常識」です。淡水生物の生食と同様の食中毒事例はクマの刺身、馬の刺身での寄生虫食中毒事例なので、特殊な食べ方(俗に言うゲテモノ食い)をしないように。要は、危ない食べ方は避けられてきた結果が現在の調理方法です。

生食のホタルイカがお店で売られていることがあるのは、内臓を取っていたり冷凍されているからです。「なぜ食べていいのか?」を考えてみる事で、自身を守ることにつながります。

特に注意するべき寄生虫

いずれも加熱か冷凍で安全に食べることができます。

さばくまで刺身にできるかは判断できないので、無理に刺身!と固執しない事が大事です。

アニサキスについては「こちら」

クドアについては「こちら」

冷凍は残念な気もしますが、数か月保管できて好きな時に5‐10分で刺身が食べられるので便利です「こちら」

恐れなくてもいい寄生虫?

ここからは、恐れずに身近な生き物として覚えてほしい、無害な寄生虫の紹介です。

そもそも全ての寄生虫は加熱か冷凍で死んでしまうので食中毒にはなりません。

人によっては見た目やイメージによって気持ち悪いイメージもあるでしょうが、イキモノを食べている以上、目に見えていないイキモノ含めて様々な命をエネルギーという形で吸収する事でヒトは生きています。

自然の中で生きてきた魚に寄生虫がいることは、ごくごくアタリマエの事と考えてもいいでしょう。

寄生虫に見えて寄生虫ではない場合もあります↓イカの発光器。詳しくは「こちら」

 

ここからは日常生活で出会える子たちを紹介しています。

魚好きとして普通に生活していたら、2-3年で制覇できるでしょう。一年で制覇!も可能です。

〇ピンノ(カクレガニ) アサリ等二枚貝

二枚貝に隠れているカニ。カワイイです。食べるとカニの味。

普通に食べても大丈夫ですが、エビカニアレルギーの方は二枚貝には要注意。

〇ウオノエ タイ、イシモチ等々・・・

気づかずに食べることはない大きさの、口の中に潜むダンゴムシのようなイキモノ。

タイに潜むタイノエは鯛の福玉といわれる縁起物。

大きい方がメスで小さい方がオス、夫婦セットで出るので縁起ものなのです。

魚の口の中でギュッとしがみついており爪が鋭いので少し痛い。これを食べてしまったら無害ではないでしょ!という人はさすがにいないでしょう。

水族館のヒーロー、ダイオウグソクムシの仲間で、料理教室で見つかると歓声が上がります。

エビのような味で、マァマァいけるので、いたら焼いて食べてみてください。

〇ニベリニア イカ!

鮮魚のイカなどで見つかるナメクジ君のようなカワイイヤツ。指の上で動く様子もオススメです。

〇粘液胞子虫 スズキ!

米粒より小さい、白や黄色のツブが見える場合があります。

見た目が悪いので取り除いてもいいですが、冷凍して食べれば無害ですし、表面に衣をつけ熱を通せば身が白くなって目立ちません。

スズキから。(クドア イワタイ:冷凍をおススメ!)

加熱すれば目立ちません!魚一尾を捨てるなんてアホなことしないように。

メバチマグロから。周りの筋肉が溶けてゼリーミートの原因になる。

メバチのほとんどは冷凍です。見た目は悪いですが、冷凍ならそのまま食べても大丈夫です。

〇テンタクラリア カツオ!

カツオをさばいていたら、いらっしゃいました。冷凍カツオなので無害。見た目の問題だけです。

〇サケジラミ 鮭 ウオジラミは各種

鱗の隙間に潜り込んで泳いでいる時に剥がれないように付いている。

つまり、ウロコを取っているとおおよそ取れる。

皮を焦げている感じにパリッと焼けば目立たないかな?

〇ブリ糸状虫 ブリ!

初見では驚かずにいられない、心の傷がブリの体の中に潜むミミズのようなヤツ。

筋肉に寄生するので可食部分が減るのが悲しい。周囲が溶けている場合は削って食べればいいでしょう。寄生された魚が生きていたことに驚くほどの長さが寄生している場合も。

・・・・土の中にいる似たヤツとは、小さいころ遊んだのでは?

ブリ線虫のイメージ写真(ミミズです)

これがイヤダ!という人は、サクや半身になっているブリを買ってもいいでしょう。

加工代は上乗せされますが。

○ヒルディネラ イナダ!

東京湾の1KG程度のイナダから。ブリ線虫かと思ったら、こんなに小さなヤツでした。

こいつが通った後は黒く見た目が悪くなります。右上に通った道が黒く見えます。

吸盤が二つ付いており、片方ずつ吸い付きながら移動します。

内臓の腹腔内が真っ黒に汚れる場合もあり、商品価値がなくなります。

この子が通った場所以外は見た目も問題ないので、お刺身でおいしくいただきました。

ペンネラ(サンマヒジキ虫) サンマ!

取り除いてもそのままでも、焼けば関係なし。

サンマが泳いでいる時に邪魔にならないのかな?と水の中でゆらゆらしてみてもいいかも?

〇ラジノリンクス(赤い糸に見える) サンマ!

サンマの内臓に見える子です。悪さしないのでそのまま食べてOK!

熱をかけても色は赤いまま。長さは2センチ前後。

〇カニビル カニ

岩などに付くカニビルがカニの甲羅に付いたもの。

ツブツブの卵の中に赤ちゃんがいます。

見た目はイマイチかもしれませんが、カニビルが付いていると、脱皮から時間が経過している証拠(=身が詰まっている)なのでオイシイ証です「こちら」

 

寄生虫がいた魚は食べたくない?

知らない・見たことがない人にとっては漠然と気持ち悪いと感じるでしょうが、安全にする方法がわかっていれば安心です。

「加熱しても、寄生虫が中にいるのは気持ち悪くて食べられない」という人は一定数いますが、食べても安全なものは、普通にいただくと考える人もいます。

野菜も、葉っぱに虫が停まったのでは?歩いていたのでは?等と考えはじめると、気持ち悪くなる人もいるでしょう。はちみつは何が集めたの?とか。

気分もおいしさの一つです。「そりゃー生き物だもの。これが当たり前だろう」ぐらいにおおらかに考えて、わざわざ「かもしれない・気持ち悪い」というマイナスイメージを自分の中で大きくしないでもいいのではないでしょうか。

それよりも、体半分を乗っ取られても敵に食われずに生き残ったブリ。その元気な半身はしっかり食べよう!とか、前向きに、楽しい考え方で、命を無駄なく食べてほしいです。

それでも・・・絶対に見たくない!という人は、半身や柵になった魚や切り分けられた魚を選ぶのも手です。当然手間がかかっているので、その分はお値段は高くなりますよね。それを選択するのはあなた自身です。

完璧と安全は違うので、どう生きていきていきたいかを考えて、魚と向き合ってくださいね。

もっと知りたい寄生虫 データベース

他の寄生虫は「こちら」から。魚種や部位で検索できます。

このデータベースを作成した方の意思は趣旨説明にあります。

この写真や病気の数以上に、養殖現場や漁業者、加工業者さんの嘆き・手間が背後にあります。

面白おかしく話題にするためではないので、楽しく安心な食生活を送るために利用してください。

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