中学校 生物 イカの解剖を手軽に身近に!
イカの解剖はこのページにおまかせあれ!
50分の授業で片付けまで独力で実施するのは大変です。生物・科学をもっと好きになってもらうために学校の先生がこのページを生徒さんに見せながらイカのポイントを説明できるように作りました。
※全て説明する必要はありません。これ楽しそう!というポイントに時間をかけて下さい。
食材でもあり、血が赤くないイカは気持ち悪さを感じないので解剖におススメの食材です。
速やかに解剖できれば食べてもいいですが、先生が持ち帰って食べるのもフードロス対策としては重要です。
場所の都合でイカを廃棄しなければならない場合は、「イカの命を知識としていただく」と捉えれば、イカも許してくれるハズ。でも「命」なので遊ばずに真剣に取り組んでほしいです。
イカは荷が重い!高い!という場合は、観察メインで外部形態を勉強する「エビの解剖」ページや、「メヒカリ解剖ページ」もどうぞ。
準備するもの
イカ :イカならなんでもOK。海が近くて可能なら活イカ(生きているイカ!)なんていいですね。
船凍イカ↓は青い血が見れたり、在庫が常にあって天候に左右されないのでおススメ。
解剖図:「スルメイカ観察シート」がカラーでわかりやすく最高におススメ。「能登里海教育研究所」さんにお願いすると実物を送ってくれる場合も(実験前に余裕をもって依頼してください。実施風景の報告もお願いしますネ)。
ハサミ:解剖用でも、キッチンバサミでも。
その他:お好みでピンセット、まな板、ヨウジ等。
最初に・・・イカをどれだけ知っているか?イメージでスケッチ(なにも見ずに宿題!にしておくとスムーズです)
「こちら」に、↓こんなファイルがあります。自由に加工して印刷し、1-2分でなるべく詳しくスケッチをスタート。
実は皆自分が食べているイカの事をほとんど知りません・・・。
ヒントは・・・目は何個?口はどこ?タコの足は8本だけどイカは何本??キミが書いたイカの名前は?
等を考えてメモしながら。
自分の知識がどの程度か認識でき、わからないから知るために解剖するのだ!とわかるハズです。
最初は知らないのが当たり前。恥ずかしがらずに堂々と書いて間違えましょう!
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スケッチの・・・結果発表~!(宿題でスケッチしてきたら教室の前でイカを配布して席に座らせるとスムーズ!)
形態を比較観察するときに向きが統一されていないとわかりにくいので、生き物は特徴が分かる向きから頭を上にして書きます。
「こちら」からマルハニチロさんのポスターをゲットして、イラスト確認時に広げると、説明しやすいです。↓マルハニチロさんHPより。
イカの頭は目がある部分なので上側に書くと・・・このような方向になります。
色々な形があって速そうなイカも。
頭から腕が10本生えているのが特徴で頭足類(とうそくるい)と呼ばれます。
解剖方法 動画
解剖しながら動画を見るのは大変なので、このページをスクロール(爪楊枝でツンツンするとパソコンが汚れません)がおススメですが、動画を見るとイメージがわきやすいです。
外部形態の観察
解剖は切る作業が目的ではなく、外部形態でこれ以上観察ができない!という場合に切る事でより理解できるという側面もあります。
なので、外側からわかる特徴が大事です。順番に見ていきましょう。
①色素胞の観察
よく見ると、点々の集まりが色を作っています。
色素胞(しきそほう)といって、この細胞が広がることで色がつき、縮むことで色が無くなります。
生きているイカはほとんど透明ですが、状況によって色を変え、敵や餌から見つかりにくくします。
②目の位置
敵・餌が見つけやすい「真横」についています。前から見えるように目を書いてる人!
残念!同じ側に目が2つ付いていると背後から食べられてしまいますヨ。
③分類入門:カワイイイカとキモカッコイイイカ・・・。
ちなみに・・・ダイオウイカやスルメイカのような目の中に海水が入るような開眼目(かいがんもく)、ヤリイカやアオリイカのように海水が入らないように閉じている閉眼目(へいがんもく)のように目の特徴でも分類されます。
可愛いイカは閉眼目、キモかっこいいイカは開眼目です。
ヤリイカはカワイイ閉眼目!
キモかっこいいスルメイカは目の中にピンセットやヨウジを入れる事ができてしまうので、恐る恐る試してください。ゲゲって感じだけれど・・・・。
左は開眼目のスルメイカ 右は閉眼目のヤリイカ
可愛くないけれど、肝臓がパンパンで旨いのはスルメイカ。と覚えれば塩辛が作れますね。
閲覧注意!目の中にヨウジが入る開眼目!キモイ!
↓圧巻のアッカンベー的な・・・。
進化のどこかのタイミングでこの2種に分かれたのでイカの種類を分ける一つの方法としてココを見るのです。
④腕の王冠
吸盤の中に王冠(クラウン)があります。タコには王冠がありません。
↑王様の冠のような形もあれば、↓ホタルイカのように爪状になっている場合もあります。
↑おわかりいただけるだろうか?色の変わっている触腕の先端の王冠が爪状に。
↑一匹で50Kgを超えるアメリカオオアカイカの王冠はこんなに大きい!指輪サイズで痛そう。
ともかく、王冠があるかないかでイカとタコが区別でき、丸くない王冠が進化しているとまた分類できそうかな?とわかりますね。
⑤口
腕の真ん中に口があります。
口の中にはカラストンビと呼ばれるクチバシが2つ。
タコも同様にカラストンビがあります。左がマダコ、右がアオリイカ。
クチバシで齧った肉が歯舌(しぜつ)でさらに細かくなって食堂を通って胃に運ばれます。
「ツメタガイ」はこの歯舌でアサリなどの貝殻に穴をあけるのです。ヤスリのようになっているのです。↓これはヤコウガイの歯舌。ザリザリヤスリ状態なのがわかります。イカもカラストンビで砕いた肉をさらに小さくするので、口の付近にあるハズ。ザラザラなので触ればわかります。
⑥漏斗(ろうと)
口のように思うけれど、むしろ逆。排泄物やスミ、ジェット噴射の水がでるのがロウトです。
逆方向に泳ぐときは漏斗を逆にむければいいのです。
上のホタルイカを見れば、どこから水が入っているかもわかりますね。
水道水を胴体に流し入れると漏斗から水が出るのが観察できます。
水流が強ければ、イカをひっくり返さなくても漏斗から水がビューっと出ます。
実験器具の漏斗も同じように水を集める役目ですね。
さて、いよいよ解剖!
ハサミを準備します。
解剖ハサミだと丸い方をイカ側にすれば内臓が傷つかないようにできます。
ザックリとした手順を最初に動画でみてイメージできたら、じっくり観察しながらすすめます。
切るのが目的ではないですからね!観察が目的です。
①漏斗を上向きに置く
②胴体を切る
漏斗は切らずに、胴体を一直線に先まで切ります。
ヨウジが置いてあるところを切ります。
↑上はロウトが下になっています。ロウトがある方を切りますヨ!
内臓が切れるので刃を立てないこと。解剖用ハサミでもいいですね。
先まで切ります。
③軟骨を外しながら、ゆっくり開く
胴体と頭部分はボタン状の軟骨でつながっています。
↑右手人差し指の部分に「T」の字の軟骨部分があって、ゆっくり開けるとはずれる感触がわかります。
つけて外して・・・と繰り返してみましょう。
左手人差し指の部分に透明な膜があるのでそこは指を動かして切ってしまいます。
④青い血を確認
イカは銅(ヘモシアニン)で酸素を運び、青い血をしています。
時間が経つと透明になるけれど・・・酸素と結びつくと青いので、冷凍されたままのイカだと青い血が見える事が多いです。
左右に広がるエラ部分に青い血が通った血管が見えます。
⑤漏斗を切り開く
漏斗の中に墨や排泄物が出る場所があるので観察します。
エラの間、真ん中にデデン!とあるのが肝臓。その上に墨袋と直腸があります。
奥から手前にやさしくなでると、一番上の直腸から💩、その下の墨袋から墨が出てきます。
漏斗から水を出して泳ぐ際にスミも💩も流れていく水洗トイレ方式だとわかります。
これらを放置すると真っ黒になって観察には邪魔なので、少し排泄させたら、出口をしっかり指でつまんで上に引っ張り取り去りましょう。
目ざとい人は気づきますが・・・なんと!肝臓と墨袋の接している部分は膜が透明で、中の黒いスミ、茶色の肝臓の色が見えます。
外套膜は生きている時に透明なので、スミや肝臓の色が外から目立つと海の中に内臓が漂っているように見えます。
なので、外から見える内臓表面が敵に見つかりにくい様に銀色っぽくなっているのです。
生き物が生き残るには色もとても重要で、体の中も生き残るためにイロイロ進化しているのです。
墨袋が黒いというイメージで探そうとした人は、見つからなかったはずですよ。
さらに雑学ですが、イカスミはタコスミのように広がらずに、変わり身の術です。
ちょっと可哀そうですが、絶対に逃げられる距離でエイっとイジメてみました。
⑥腕を持って胴体から外す
腕を垂直に立て、胴体(外套膜)をしっかり押さえて左側(エンペラ方向)に引っ張ります。
胴体と内臓が取れた瞬間に、勢い余ってペチョっとならないように最後は力加減が必要です。
軟甲(貝殻:骨)が浮いて見えるほか、エラとエラ心臓だけが胴体に残るハズです。
⑦エラの観察
胴体にエラ心臓とエラが残るので、エラ心臓を掴んで頭があった方向に引っ張り取ります。
水の中に浮かべると鳥の羽のように広がり、水中で酸素を取ろうと表面積を大きくしている様子がわかります。
⑧軟甲・軟骨・骨・プラスチックみたいなヤツ・・・を取る
腕と内臓を取るタイミングで出てくることが多い軟甲を取ります。
骨もイカの種類によって色々。貝の仲間だけあって貝っぽいものも。タコもシッカリあります。
左から コウイカ、アオリイカ、ヤリイカ、ケンサキイカ、スルメイカ、マダコ
成長線が年輪のように見えるので貝っぽく見えます。
⑨胃袋の位置を観察
カラストンビを動かす筋肉は丸っこく腕の中央に隠れています。
ミズダコも同じように丸。でもとても大きい。
丸くて滑るので3本指でひっぱってください。
口をひっぱると食道につられて胃が動くのがわかるため、食道が目と目の間を通って外套膜の先までつながっていてそこに胃があることがわかります。
さらに引っ張ると食道と胃のつなぎ目で切れて抜けます。
食道の長さを比べてみることで、胃の位置がわかりやすくなります。
とても細い食堂を通るために、カラストンビで齧って口の中の歯舌でミンチ肉にしている事がイメージできますし、他にもマダマダ見ていくと発見はあります。
肝臓以外、胃などの内臓は、指で掴んで引っ張ることでとれます。この部分は食べませんが、肝臓はゲソ等と炒めて食べると美味しいです。
⑩漏斗の中の弁
漏斗から逆流しないように弁が付いている!など、ジックリ見れば発見があります。
⑪目玉の中の水晶体
水風船のようになっている目玉は、力を入れると爆発して3メートルぐらいに目玉液が飛ぶので注意。
白い服に飛んでしまうと・・・爆発させた人、被弾した人、指導している人の・・・3方悪しで最悪です。
安全なバクダン処理方法として・・・水の中に目玉を沈めて・・・
端をチョキっと切ると
ボフっと爆弾処理の完了です。
そのまま揉めば真ん中から透明な水晶体が出てきます。
新聞の上に置いて見てもいいですね。
絵を書く
ジックリ観察した後に絵を書くと、最初のイメージして書いた図と比較して、自分がとても成長した!ということが分かると思います。時間がある場合は、外部形態をしっかり観察後にスケッチするといいですね。
フードロス対策
解剖してどこが食べられるかわかれば、無駄にする部分も少なくなります。
胴体以外捨てていた人も腕や肝臓は食べられるとわかりますね。
外套膜(胴体)71g、腕と内臓83g、左の内臓(胃、エラ、墨袋)20gでした。
20グラム以外は食べることができますが皆さんはどうしていますか?
スーパーでイカをさばいてとお願いしている人が、「腕と内臓いらない!」と言っているのを聞いたことがありますが・・・半分以上を捨ててしまうのは・・・もったいない!
解剖後に学校で生徒が食べる事が難しい場合は、先生方が責任をとるのも一つの手です。
真水で表面を洗って冷凍しておいて、加熱して食べれば美味しく食べることができますので味の感想を生徒さんに伝えてください。
保存方法は「こちら」から!
全世界のイカの種類数は?
イカは全世界で約600種類いて、様々な大きさ、形があります。「こちら」に400種超の図・写真があるので見るとおもしろい!見て欲しいのは「ボウズイカ」の仲間。形がカワイイ!何となく名前で分類されている事もわかります。
他にも知ってほしいイカ情報は動画でも紹介中!
食べるだけではもったいない素敵なイカの世界!
おまけ!これを知ったら研究レベル??
「全世界に魚は何種?」 日々変わる種類数。英語の勉強にもなります。
「名前の不思議 和名・英名・学名」 分類について気になり始めた人向けです。
「魚は新鮮なほど美味しい?」 熟成とATP(アデノシン三リン酸) 高校レベルかな?
身近なイカで、結構な気づきがあったのではないかと思います。
モット水産物を知りたくなった人は・・・将来水産業界で待っています!漁業者でも研究者でも、どこかで会いましょう!