未利用魚・低利用魚とは? 海の資源を上手に食べよう!

未利用魚の定義とは?

よく言えば「地魚」。使われないので「未利用魚」、価値がない・価値が低いので「低利用魚」、目的の魚に混じるので「混獲魚(コンカクギョ)」など、等、呼ばれ方含めて定義は曖昧です。

漁獲量(少ないor獲れすぎ)、手間(コストに見合わないサイズ、トゲなど)、知名度や知識(知られていない魚・さばく知識がない)等々。ある地域では高級でも、他地域では食べ方がわからない等の場合もあります。

ただ、今日売れていなくてもメディアに取り上げられて突然人気が出れば利用される魚になります。ブームとも関係する、農作物で言うとシークワーサーのような存在です。

未利用魚を買いたい!

「こちら」では、各地の様々な未利用魚が紹介されています。

連絡先もあるので、興味があれば直接連絡して購入条件を確認して下さい(一尾!などではなく、業務用が多いと思いますが条件次第だと思います)。

全種分かる人はナカナカいないので眺めるだけでも豊かな日本の海を実感できます。

キハダの胃袋のような部位の紹介もあれば、シュモクザメ、アオザメなどのようなイメージで食べられ得ない魚種もいますが、中にはマダイも。

理由は・・・大量に獲れると・・・価格が暴落してしまうのです。

温暖化で未利用魚は増える?

一人一人が魚に目を向けて食べてくれないと・・・・増えてしまう可能性が高いです。

今までよりも水温が暖かくなると、今までと違う魚があなたの近くの海で獲れるようになりますが、名前を知らなければ・・・食べないですよね。

温暖化の影響で、北海道では鮭の代わりにブリが、石川でブリの代わりにサワラが漁獲されるようになっています。

獲られた後、北海道のブリは本州に運ばれ、石川のサワラは関西に運ばれているのが現状ですが、近くで獲れた魚を食べればいいじゃない!という意見も。

「ブランド魚も美味しくて素敵な魚達」ですが、これからの時代は「知らない魚でも積極的に興味を持って食べる!」ということも上手に海の資源を利用する方法の一つです。

どんな魚?

よく言えば「地魚」です。全国規模では知られていない、その地域でしか食べられない、見極められる腕の良い料理人のお店でしか食べられない特別な魚!とも言えます。通だけが知っている美味しい魚というイメージと考えるとオイシソウ!ではないでしょうか。

例えば・・・北海道ではカスベ(エイ)は普通に食べられています。東京だと・・・乾燥させたエイヒレは食べた事があっても、生のエイはあまり知られているとは言えなさそう。

そもそも煮凝り等で食べていてもそれがエイと知らずに食べていたり。

このように、同じ魚でも地域が変われば、売れなくなる場合があるのです。

未利用・低利用な理由

食べられない・売られない理由は様々あり、理由が複数組み合わさる場合もあります。

①知られておらず、売れない。

名前も形も知らないと、買わない人が多いです。

特別にヒレが大きいトクビレ。断面が八角形と覚えれば「知っている魚」になり、さらに蟹のような味だと聞いたことがあれば味わってみようと思うが・・・知らなくてコノ形を見たら、買いたいか??

知らないだけで・・・モッタイナイ。奇抜な形や色など、楽しむには絶好の魚が日本の海にはたくさんいるのに・・・・。知れば食べたくなるハッカクのヒミツは「こちら」から。

 

魚を知っていても、その土地だけでしか呼ばれない名前で他の土地の人に伝えても、何その魚?ということも。

「カワハギ」が「ハゲ」は、一度聴いたら覚えるので知っている人も多いかもしれませんが、「イラギ」取れたけどいらない?10Kgだけど・・と言われても、アオザメの事だとはわかりません。

②毒やトゲが危ない

毒のトゲを切って売られる高級魚のオコゼが有名ですが、毒のあるアイゴという魚「毒のあるアイゴという魚」のように地域によっては高級魚だけど、他の地域では人気がない魚も。(食べられないためのトゲで美味しい事が多いのに・・もったいない)!

ハサミで切ってからならトゲの毒も関係なし。

③数が揃わず、売れない(たまにしか取れない・とれても一匹)

有名なら一匹でもほしい!獲れたらいつでもいいからお送って!予約するヨ!となりますが、知られていないと美味しくても売れません。名前も知らないと注文もできないし・・・。

定番メニューに入れられないなら・・いらないヨ!と言わないで。

④小さかったり骨が多くて食べるまでに手間がかかる

小さいとさばくのに時間も手間もかかります。

カラっと上げてフライにするとかの方法はありますが・・・。

⑤イメージが悪い

「サメは臭いわけではない」けれど、イメージ先行で食わず嫌いの人もいますよね。そんなことないのに。「外道だ」と釣った魚を海に捨てる(逃がしてしまう)例も同じです。

ドチザメ。お刺身もおススメ。

⑥たくさん獲れすぎた

一匹150Kgのエチゼンクラゲが網一杯にかかってしまったら・・・・船に持ち上げられないし、網が破けないように逃がすしかなかったり。

小さな魚でも獲れすぎれば売れ残ります。

現在は冷凍で保管できますし、干物等で保存する場合もありますが、余る場合があります。

値段によっては絞って魚油を取ったり、乾かして粉にして飼料や肥料にする場合もあります。

利用はされているけれど、人が食べられる食料だったら、人が食べたほうがいいですよね。

⑦大きすぎて邪魔!

約9Kgのツバクロエイ・・・一家族で食べるには3か月を要しました。

竜田揚げがウマイ!お店で小分けにして売って欲しいです。

⑧見た目が悪い・傷がついている!

他の魚にガブっと噛まれて歯型(キズとも言いますね)がついていたり・・・

↑歯型のあるカンパチ。おまけで大きいサイズにしてくれたので嬉しいし、イヤー生きていたんだねと海を感じられる。

↑天然秋鮭3.8Kg!漁師さんvs鳥??

定置網から揚げた瞬間に鳥が食べたのか、眼以外はきれいなもので、白子もメフンも鮮度バッチリで美味しく頂けました!

よく見るとクチバシで突いた跡が少し見えて、微笑ましい。

鳥につつかれても表面を水でザザッと流して熱を通せば問題なし!普段は魚の目玉を食べないくせに、完全を要求しないでよね!と言いたい!

⑨運ぼうとすると、傷をつけて商品価値を無くしてしまう!

ハリセンボンやギマのようにトゲがあると、網の中や発泡スチロールの中で周りの魚に傷をつけてしまい、商品価値が下がってしまいます。

トゲを漁師さんが切ってくれれば流通できますが・・・買い支える皆さんの力がないと切らずに海に返してしまいます。が、カワハギの仲間でとても美味しい!ギマについては「こちら」

部位による未利用!

有名な魚でも人が食べない部位があり、未利用・低利用と言われます。

例えば頭や内臓でも美味しく食べられる場所はあります。

マグロの大トロは今でこそ高級食材ですが、江戸時代は冷蔵技術が発達しておらず、すぐ悪くなるため、煮込みで食べられる以外は捨てられて(捨てると言っても肥料になる場合がほとんどだったようです)いました。

このように時代や技術によって、美味しい事がわかって高値で売れるようになる場合があります。

未利用魚・低利用魚を少なくする工夫

流通の工夫

鮮度がすぐに落ちてしまう鮮魚は、なるべく無駄にならないシステムができています。

市場は全てを受け入れます。ただし、買う人がいないと値段は下がるので、期待した値段で売れずに損をする場合があります。誰かが損をすると、何度も損をしないように売れない魚は・損をした魚は獲らない・買わないようになります。自然に売られない魚が出回らないようにできているのです。

逆に、人気が出ると相場(値段)が上がって予約が入り、出回るようになります。

珍しい魚が美味しかったら買ったお店に「美味しかったからまた食べたい!」と言っておくことをおススメします。

漁師さんの工夫

魚を獲る場合は、小さすぎる魚が獲れないように網の目を大きくしたり、赤ちゃんのカニが逃げられる逃げ場所を作ったりして、大きく成長してから獲れるよう、海の資源が無駄にならない工夫がされています。いちいち逃がすのも大変なのでそのように工夫が進みます。

魚種を選んで獲る工夫もあります。季節や深さによって獲れる魚が変わるので、経験で狙えるようになります。そうする事で混獲と呼ばれる、狙った魚以外が取れる事を防ぎます。

もちろん、そのような工夫をしていても、取れてしまう魚もいるため、水中カメラで獲りたくない小型のマグロを逃がすようにできないか等、研究も進んでいます。

海上投棄している?

網の中に大型クラゲが多く入った場合などは、網を上げる事ができず魚も触手で弱っているため逃がす場合があります。

クラゲがいなくても、売れない魚が多く入っている場合は、生きているうちに少しでも早く逃がすようにしている場合が多いようです。

捨てている?とんでもない!貴重な資源として利用されています

陸で「捨てる」場合は、捨てると言っても飼料や肥料になることがほとんどです。

市場ではほぼ全てが飼料になります。また、魚屋さんでも内臓や皮などを飼料屋さんが一軒ずつ回って回収し、無駄にしていない場合が多いです。「捨てる」つもりでも、上手に利用されています。

昔はお金を払って持っていてもらっていたこともありますが、今は飼料屋さんがお金を払って内臓を持って行くようになっています。そう考えると、「捨てているわけではなく、実際は売っている」事の方が多いですね。

魚の油はDHAやEPAが多く含まれるので、マグロやカツオの頭はグツグツ煮て魚油を取ります。健康食品、結構高いですが、カツオブシにするためにぐつぐつ煮た後の油や、刺身にして残った頭から取ったりしてるのです。

未利用魚・低利用魚の利用例

人が食べられない魚たちも、人の技術や工夫によって立派に利用できるようになった例があります。

①鮮度がすぐ悪くなり、冷凍するとぼそぼそになっていたスケトウダラ

⇒冷凍スリミ技術を作り、カマボコ、ちくわなどの原料に。

②殻が柔らかいエビ(脱皮直後)

⇒「ソフトシェルシュリンプ:殻が柔らかいエビ」として頭ごと全身食べられるエビとして販売

③小さい魚が沢山獲れる

すり身にして練り物にしてさつま揚げなどに。骨もなくなって食べやすい!

おすすめの未利用魚

見てカッコイイ、スゴイ!キレイ!だったらそれがおススメ!

魚のさばきかたは基本は一緒。トゲだけ気を付けて知らない魚も積極的に食べてみましょう。

たまに毒がある魚などもいるので、自分で判断せず、市場を通った魚などプロが安全だと考えて売っている魚がいいでしょう。

有名でない魚も食べて欲しい理由

①皆さんの食生活が豊かになります。色々な魚が食卓に上がると話題も増えます!

②地域が元気になります。漁師さんや加工屋さん、お店の人の収入になって、将来の仕事になります。

若者が仕事として漁師さんを選び、その地域に住むことにつながると町も若返ります。

③メジャーな魚の資源を減らしにくい形になる。

まぐろしか食べていなかった人が、地魚好きになると、人気がまぐろ資源に集中しなくなります。

④海外の魚介類が「買い負け」で買えなくなったとしても、食料として活用できる!

日本の経済を守る事にもつながりそれが自分の将来の仕事になる場合もあります。

⑤本当は食べたい魚介類を守ることにつながる

例)ツメタガイはアサリを食べてしまう。ツメタガイを食べればあさりは増える??

砂だけ注意してさばけば結構おいしい!「ツメタガイのさばき方」もどうぞ!

人気が出ると値段が10倍以上になって買えなくなっている魚介類も多いのです・・・「海外勢との買い負け」と関係がない国内の魚を上手に食べましょう!

他にもいろいろないい事があると思います。

そもそも、「多くの種類の魚が獲れるのが日本の海の特徴!」です。海に囲まれた豊かな海を受け入れましょう!

実は美味しいけれど知られていない魚介類はたくさんあるので、食わず嫌いにならずに興味を持って食べてみてくださいね。

※未利用魚は何でもかんでも食べていい?

現在は、肥料にしたり海に戻していたりしていた、人が利用していなかった未利用魚を人が利用する形にしようとしている段階です。

未利用魚がバンバン売れるようになれば・・・・今まで以上に獲るようになる可能性があります。

そうなると資源が一気に減ってしまう魚種が出てくる可能性があります。

当然需要が高まれば価格も上がるので、漁師さんそれぞれが地元の魚資源が減らないようにコントロールをしていく取り組みも始まりつつあります。一般的な魚の守り方の例は「こちら」

テトラポッドを沈めて・・・という例は、強制的に持続的な形になり面白い取り組みです。

このように地域によって考えられているのです。

実際に食べてみた例

私は・・・漁師さんも絶賛、東京湾で一番美味しいと噂のツバクロエイの刺身を食べたい!と気になっていました。

実際にさばいた例は「こちら」から。

札幌テレビ「どさんこワイド」で取材協力しました。

地域によって未利用魚は変わります。時代によっても・・・。「こちら」からどうぞ。

もったいないを考えよう~教えて未利用魚~ 動画の紹介

横浜市教育委員会、よこはま学校食育財団、横浜市中央卸売市場魚食普及推進協議会が連携して未利用魚を利用した給食と一緒に紹介した動画です。

普段は入れない市場の様子が見れるシーンも!

「フードロスや環境に関係したページ」も参考に、豊かな海を皆さんの手で守っていきましょう!

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